挨拶message

会長 兼 理事長

松本栄文Sakafumi Matsumoto

毎年数百冊の料理本が出版されるなかで、後百年先に残るべき書籍は何冊あるものなので御座いましょうか。きっと二百年前の江戸時代に書かれた料理本が今に伝わるよりも、遥かに少ないような気が致します。それは一冊一冊の著書に「読者へ何かを伝えたいと思う著者の哲学が少ない」からです。日本人は他国異文化を独自文化と融和しながらも、伝統的な大饗料理、有職料理、本膳料理、懐石、懐石料理、会席料理から、異国文化の受容により考案された洋食(ナポリタン、餡パン)、焼餃子、ラーメン、カステラ、どら焼き、ショートケーキなど、正に文化を「和(あえる)力」をもって日本人特有の食文化を築いて来ました。

こうした“世界に類を見ない”日本人の多様的食文化を百年先の日本人へ伝えるためにも、一文字一文字に信念を込め、日々日頃より御活躍なさっておられる“著作家同志が集結”することは、真の文化継承に寄与するとともに国際的文化交流にも貢献するものと信じております。百年先の日本人に「今」を伝えたい。そう思う己の役目から『一般社団法人日本食文化会議』を設立した次第です。私たちは伝えたい「誇り」と「役目」があるからこそ、今を活動致します。

副会長

上杉孝久Takahisa Uesugi

文化と言う言葉の定義を調べてみると「人類の理想を実現していく、精神の活動。技術を通して自然を人間の生活目的に役立てていく過程で形づくられた、生活様式およびそれに関する表現」(岩波国技辞典)とあります。これを「食」で考えてみると「食文化」となります。つまり日本の食文化とは、われわれ日本人の歴史に沿って進化してきた「食物」を中心とする生活様式なのです。さらに日本の食文化には、他民族の食物や料理も同化する力がありました。

私の専門分野の日本酒で言えば、大陸から入って来た麦麹を使ったアルコール発酵が、いつの間にか日本独自の米麹を使ったアルコール発酵になり、千数百年の間にさらに進化して、現在の日本酒として続いています。
 この食文化の歴史の流れは、日本人として「受け継ぎ」「守り」「育てて」「伝える」べきもので、それこそが日本食文化会議の存在意義なのです。

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